チャンス、テスト、ターニングポイント

(07)スペイン

神様というのは多分存在していて、自分のやるべきことに邁進している人には、ある時、棚ぼた式にチャンスを与える。
その棚ぼたチャンスは、その時は大きく花開くことないけど、それがターニングポイントになることがある。
例えば、誰かの代役。

アルバ・エレディアは、YouTubeで見つけ、「す、すごい!」と衝撃を受け、チェックしてた踊り手でした。
ここヘレスで、大劇場ではないけど、小劇場で公演をやると知り、日本にいるときからチケットの予約をしてました。
大劇場公演がお休みの日に上演するので、小劇場だとすぐにチケットが完売しちゃうと思い、満を持して見に行く予定でした。

アルバの翌日の大劇場公演は、あのロシオ モリーナ。
ところが、ロシオが怪我したとかで公演が中止になりました。
けど、フラメンコ・フェスティバル的には大劇場公演の数を減らしたくなかったようで、ロシオの公演をただ払い戻しするのではなく、代わりに小劇場のアルバの公演を大劇場にもってくるという荒業を行いました。

大劇場公演というのは、作り込んだオブラ作品が殆どですが、小劇場の公演は、どちらかというとタブラオのソロリサイタルに近い。
照明効果も桁が違うし、流れの作り方も全然違う。
それを大劇場にもってくるというのだから、アルバと関係者たちはこの数日、慌てたと思う。

でも、アルティスタというのは、こういうチャンスは躊躇わない。
想像に過ぎませんが、迷うことなく、この話は引き受けたに違いない。
きっと即答だったと思う。
恋愛も舞台も仕事も、どうしようかウダウダしてるのはチャンスを逃すし、それほどまでに手に入れたいものではないのでしょう。
本当に欲しいものは、転がり込んできたときに、迷うことなく手を出す。
そして、ただひたすら、その時にできる限りの力で臨む。

 

テクニカが上手くなり、舞台に慣れ、洗練され、大劇場で公演を行える人たちにリスト入りしたとしても、その人たちですら、崖っぷちギリギリを歩くかの様な臨場感は出せない。
それは崖っぷちを歩く人にしか出せない。
舞台は、この崖っぷち感を漂わせ、ただひたすらに頑張る人たちが輝くようにできている。
神様は、ただひたすらに自分に向き合い、頑張る人を愛する。
そして、そういう人でないと、魂を震わすような踊り、歌、演奏ができない。
舞台を見ると、いつもそれを感じる。
だから、チャンスが舞い込んできたのにウダウダする人のことを私は、大したことはできないだろうなって思う。
ウダウダするのは守りに入ってるから。
でも、当然ながら、守りに入ってる人が捨て身にはなれない。
でも、世の中は捨て身にならなきゃ手に入らないものは多く、そういうのに限って、大事なものだったりする。

 

何年かして、アルバがもっと上手になり、大劇場公演に相応しい作品をもって乗り込んできたとしても、昨日程の踊りはできないと思う。

まさにアルマでありました。

アルバは、これまで頑張ってきたんだろうなぁ。
神様からチャンスをもらった。
神様からのチャンスは、ただのチャンスではなく、テストでもある。
「本当に頑張れるか、見てるよ」って神様はアルバを試した。
ここで頑張れた場合のみ、このチャンスが後々のターニングポイントとなる。

 

昨日は、アルバのターニングポイントにたちあえて、光栄でした。
感動しました。

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