踊りのレッスン

(07)スペイン

いつだって、私たちには今しかない。
けれども、戻らない過去を懐かしんだり、悔やんだり、
どうなるか分からない未来を憂いてみたり、不安になったりする。
それは、人間にとってはとてもストレスなこと。
今の瞬間だけに集中できていれば、人は心が病むことはない。

 

踊りのレッスンを受ける良い点の一つは、その時間、他のことを考えなくなれることかもしれない。
目の前の先生の踊りに集中し、指導されたように動くべく、また集中する。
他のことを考える余裕なんてない。

 

この2週間、30時間のレッスンを受けました。
それは、過去からも、未来からも遮断され、現在しかない時間でした。

 

普段の私を知る友人には、
「みえちゃん、調子いいの?お肌艶々!」
と言われました。
実は、自分でも感じてました。
大好きな踊りのレッスンを受け、汗をかき、毛穴全開、ストレスフリー!

兎に角、久々のヘレスフェスティバルは、楽しかったです。

 

もうスペインには来れなくなるかもしれないと思った時もありました。
今回は、いつもの半分くらいしかレッスン取れませんでしたが、ここに来れただけでもめっけ物でした。
そして、レッスン数を減らしたお陰で、レッスンに物凄く集中できました。
時間に余裕があったので、前期も後期も、レッスン後に、振りを覚えられなかったクラスメイトたちから頼まれ、ビデオを撮らせてあげたりしました。
そんなこともあり、外国のクラスメイトともいつも以上に交流がありました。
道を歩いてたら、バルでのんびりしてる外国人のクラスメイトに会い、ちゃっかり一緒にお茶したりして、楽しかったです。
レッスンを半分に減らした分、余裕がなければできなかった人との交流を持てました。

人生は、人との繋がりが全てだと思う。

45になり、この人生の折り返しを過ぎたと思われる頃になり、人との温かい交流がなくして、人生に何の喜びがあろうかと、やっと分かるようになった。
久々に会った日本の友人たちからも、ポソっと、
「みえちゃん、元気になって良かった」

と言われた。
友人たちに直接は病気の話はしてなかったけど、心配しててくれたようで、それがホンワカ伝わりました。
冷たい空気になり、縁が切れる友人もいる。
それは仕方ない。
お互いに道が違ってしまったのだから仕方ない。
そんな中でも、温かい交流を持ち続けられる友人たちがいることは、やはり人生の喜びです。

 

最終日の今日、マリアに、
「2週間、どうもありがとうございました。
けど、実は、インタバルがあるけど3週間連続なのよ。
3年前にも、あなたのクラスを取ったのよ」
と伝えたら、
「シー、覚えてるわよ。サラ・パウラだったでしょ」
と言われました。
なんと、覚えててくれたのか!
ヨーロピアンにとって、東洋人の顔は分からないかと思いきや、割りと多くの人は、
「名前は覚えられないけど、顔はおぼえてる」
と言います。
前回は、マリアの他にベタンソも取ってて、気持ちが分散してしまいました。
今年は、マリアだけに集中できて、良かった。
特に、2週目からはマリアのノリというか、言わんとすることが段々分かってきました。

マリアは、しょっちゅう言ってました。
「テクニカは一週間では身に付かない。
振りは一ヶ月もすれば忘れる。
けど、歌や音楽を聞き、感じて踊る、表現して踊ることをレッスンでやったら、それは身体が覚えててくれる。
次の新しい振りを習っても、それは活きてくる」
今から8年前、私に衝撃的なレッスンをしてくれ、
「スペインに長期で踊りを習いに行きたい!」という眠っていた衝動に火をつけた先生がいます。
ベタンソです。
彼も同じことを言います。
マリアも、私の内なる衝動に火を点けてくれました。
また、2週間、毎日2時間半も踊り、かなり筋力、持久力が戻ってきました。
私をヤル気にさせて下さって、ありがとうございました。

アントニオ・マレーナという偉大なるカンタオールと、サンティアゴ・モレーノという、これまた偉大なるギタリストの音楽を聞きながら、感じながら踊る贅沢な時間を過ごさせてもらいました。

 

今夜は、フェスティバル最後の公演があります。
アントニオ『エル・ピパ』です。
マリアがピパ様とパレハを踊るそうです。

次に、またスペインに来れるかどうかは分かりません。
今宵、思う存分、フラメンコを楽しんできます。

 

 

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