来年2月公演 哀しき寧々、関ケ原の勝敗を左右する

(03)舞踊団公演

関ケ原の戦いは、歴史に詳しくないと
徳川家康と石田三成の戦いのように思われがちですが、
実はそうではなく、
秀吉が亡くなった後の政権は、
『後継ぎの秀頼(茶々の息子)』か『実力者の徳川家康』の
どちらが握るかというお家騒動でした。
内部抗争が激化し、
「このままでは豊臣家が滅びてしまう」
と案じた人がいました。
秀吉の糟糠の妻・寧々でした。
 
秀吉と寧々の間には子供がいませんでした。
代わりに、秀吉と寧々は、多くの親戚の子供たちを引き取り、
後継者候補として手塩にかけて育てました。
情に深かった寧々に、
ありったけの愛情を注がれ育っててもらった武将たちは多くいました。
その武将たちにとって寧々は、お母さんでした。
 
関ケ原の戦い前、寧々は家康側に付く決断をします。
そして、寧々に育てられた武将たちが、
「寧々が家康につくなら、俺らも!」
と家康側につきました。
 
ではなぜ、寧々は三成ではなく家康についたのか。
 
秀吉と正室・寧々の間に子供ができなかったこともあり、
寧々は秀吉に側室を娶らせ、世継ぎを設けようと試みます。
武士と農民の間には大きな格差があった時代にもかかわらず、
親の反対を押し切り農民出身の秀吉と結婚する程、寧々は秀吉を愛していた。
そして、その愛は強く、内助の功を発揮し、夫を出世に導く程だった。
けれども、愛する男の天下を安定させる為の世継ぎを自分は産めず、
やむなく側室を迎えさせた寧々。
「夫が出世しなければ、自分が彼をサポートさえしなければ、
二人で慎ましく生きていけてたのかもしれない。
夫の出世は喜ばしい。
けれども、自分の女としての人生は、果たして幸せなのだろうか」。
寧々はそう思ったのではなかろうか。
それでも側室たちは正室である寧々を立ててくれていたし、
誰にも子供ができなかったこともあり、
寧々は側室たちとそこそこ仲良くやっていた。
ところが、秀吉は茶々に惚れこみ、側室に迎え入れたことで状況は一変する。
茶々は親の仇である秀吉が大嫌いだった。
年もすごく離れててジジイだし、
「こんな猿!」ってさげすむ程だったから男としても魅力を感じなかったどころか、
「超キモイ」と思ってた。
その上、茶々は信長の姪という超お嬢様。
「お前ごときが私を娶るだと!!!ふざけんな。
けど、今の私には後ろ盾がない。悔しいけど、秀吉を頼るしかない。くそーーー!」
と思いながら秀吉に嫁いだ。
尊敬してない男の、むしろ嫌ってる男の、身分もすごく下でバカにしてる男の、
その正室を立てる筈がない。
いくら寧々ができた人であっても、
内心は「あの小娘、むかつく」って思ったのではなかろうか。
その上、他の側室には子供ができなかったのに茶々にだけは子供ができた。
「えΣ(・□・;)?!本当にうちの亭主の子なの?」
と疑ったのは間違いない。
側室が数多いれど子供ができなかった秀吉は子種がなかっただろうし、
秀吉を嫌ってた若き乙女の茶々は、
目を盗んでは他の男との逢瀬を楽しんだであろう。
なのに秀吉は、ちっとも自分に似てない息子・秀頼を溺愛し、
そのあまり、後々秀頼を脅かす存在になるかもしれないと、
寧々が可愛がって育てた後継者候補の子供たちに
謀反の疑いをかけ処刑したり、領地を取り上げたりしました。
「あの女(茶々)のせいで、私が築き上げた幸せが崩壊した・・・・」
と寧々は茶々を恨んだ。
「私も子供を産んで、秀吉に大事にされたかった」
と寧々は茶々を妬んだ。
そして、秀吉亡き後、
「誰が、茶々の息子・秀頼の側になんかに付くもんか」
と思った。
だから秀頼の対抗勢力の家康の側に付いた。
 
関ケ原の戦いが始まった時、三成軍の兵力は8万2千、家康軍は7万4千でした。
最初は、三成が優勢だった。
けれども、1万5千もの大群を率いた小早川秀秋が
途中で家康側に寝返ったことにより、戦局は一変した。
小早川秀秋は寧々の甥で、後に秀吉と寧々の養子となり、
寧々に育てられた子でした。
ところが秀頼が生まれ、秀秋が疎ましくなった秀吉により
小早川家に養子に出されたのでした。
秀秋は秀吉を恨んだでしょう。
「秀頼さえいなければ」と思ったことでしょう。
育てのお母さんの寧々が苦しむ姿を見て、
心を痛めていたことでしょう。
そして、「寧々が家康に付くなら、僕も家康に付こう」と決断した。
 
そう考えると関ケ原の戦いは、
「三成」対「家康」の戦いだけではなく、
「茶々」対「寧々」の女の戦いだったのかもしれない。
歴史の裏に女ありとは、まさにこのこと。
男は愛する女を助けてあげたい、守ってあげたいと思う、
とても優しい性質を持っている。
その愛する女というのは女房や恋人に限らない。
母親、もしくは母親代わりの人も対象だ。
はたまた、自分の周囲にいる女性全てが含まれる。
三成は茶々を守りたいと思った。
そして、家康側に付いた武将たちは、育ての母親・寧々を守りたいと思った。
戦争は勝った方が正義で、負けた方が悪になるけど、本当はどっちらも正義。
 
 
寧々の内助の功の甲斐あって、夫・秀吉は天下人にまで上り詰めた。
でも、その行く先は、多くの女と夫を分かち合うことだった。
そして、年老いた頃に、若い女が夫の心を奪って行った。
「私に子供さえできてたら・・・」
と思ったのではなかろうか。
いや、もしかしたら、そんなの関係なしに、
ただ、「愛する夫の子供を産みたかった」と思ったかもしれない。
夫の成功が妻の幸せとは限らない。
天下人の正室になったけれども、ちょっと哀しい寧々でありました。
 
 
寧々は安井さんが演じます。
ガロティンでは、
「秀吉、大好き♡」
って気持ちと、
「もしかしたら、茶々に秀吉を盗られてしまうかも」
って悲しい予感を表現します。
他でも、ちょこちょこっと寧々は登場します。
 
天下も取れたし、正室の寧々とは仲良しだし、側室もいっぱいいるし、
「超ハッピーじゃん」
と浮かれていたら、
心底惚れた茶々からは、
「超キモイ!」
と嫌われ、
その上、
「はい。あなたの子よ」
と別の男の子を自分の子として押し付けられた哀しき秀吉は、
ドミンゴが演じます。
 
乞うご期待!


 

 

一番右が安井さん

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