舞踊団公演8曲目:タラント

(03)舞踊団公演

カルタヘネーラ y タラント(エリザベス一世とロバート・ダドリー)

メアリーには異母妹がいました。
メアリーと同じくヘンリー8世を父に持つエリザベスです。
エリザベスはメアリーの次に王位継承権を持つものの、メアリーにとって憎しみの根源であるアン・ブーリンの娘であり、何が何でも王位を譲りたくない相手でした。
そこでメアリーは即位後、エリザベスに反逆罪の疑いを掛け、ロンドン塔に投獄しました。
無実を訴えるエリザベスにメアリーは、「私が望めば、おまえをいつでも処刑できる」と言ってのけました。
いつ処刑されるか分からない状況にあったエリザベスでしたが、エリザベスには心の拠り所にした恋人がいました。
幼馴染のロバート・ダドリー。
ロバートは処刑された反逆者の息子で、父親の共犯を疑われ、エリザベスと同じロンドン塔に投獄されていました。

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ヘンリー8世の一人息子エドワードが即位するも16歳の若さで夭折し、その後ブラッディメアリーが即位するのですが、メアリー即位の際に、メアリーではなく別の人を王位に就けようと、ちょっとしたクーデターが起きました。
首謀者はジョン・ダドリーという公爵様でした。
しかしながら、そのクーデターは一週間ちょっとであっけなく弾圧され、ジョン・ダドリーは即刻処刑。
共犯容疑の息子5人はロンドン塔に投獄されました。

エリザベスの幼馴染であり恋人のロバートは、このジョンの息子でした。
ロバートは恩赦によりロンドン塔から釈放されたものの、父が大反逆者だった為、爵位も領地も剥奪され、その後も大罪人のレッテルを貼られ、宮廷には居場所がありませんでした。

でも、エリザベスはロバートが大好きでした。
ロバートがロンドン塔に投獄されている頃、エリザベスもメアリーに対する反逆罪の疑いでロンドン塔に入れられていました。

いつ死刑が宣告されるか分からない同じ境遇の二人。
ロンドン塔での生活の中、エリザベスを励まし、支えてくれたのはロバートでした。

エリザベスは王位に就いた後、みじめな立場にあったロバートに高官位の称号を授け、好待遇を施しました。エリザベスはロバートに恋をしていました。
二人はいつでも一緒にいたので、宮廷内でも二人の関係を知らない人はいない程でした。
二人は結婚するのかと思われましたが、後で発覚するのですが、なんとロバートは妻帯者でした。
ただ、この時代の貴族の結婚というのは、愛がどうとかというのではなく、家同士の政略結婚だったりするので、ロバートと奥さんの間に愛があったかどうかは分かりません。
いずれにせよ、エリザベスとロバートは愛し合っていました。

でも、ロバートには、ロバートがエリザベスの寵愛を受け、宮廷内で良い立場にいるのを快く思わない人たちも大勢いました。
要は、ロバートはやっかみの対象でした。
そんな頃、ロバートの奥さんは階段から落ちて事故死します。
晴れてエリザベスとロバートは結婚か!と思いきや、それは、エリザベスと結婚したいロバートが事故に見せかけて殺害したのではという噂が立ち、益々宮廷でのロバートの立場は良いものではなくなりました。

「好きな人と結婚し、添い遂げる」
今では当たり前のことですが、当時の王族にはその自由はありませんでした。
国民の支持を失えば、反乱も起きかねません。
エリザベスは、泣く泣くロバートとの結婚を諦めました。

そんな頃、臣下たちはエリザベスに他国との縁談の話を勧めてきました。
結婚して、相手に政治を任せ、エリザベスは世継ぎを産む。
当時の女王にとっては、当たり前のことでした。
でも、エリザベスはそれを拒否します。
そして、「私はイングランドと結婚した!」という、「本気でそれで人々は納得したのか????」と思うような理由を言い、独身を貫くことにしました。
そして、結婚できなくてもロバートを側に置き、寵愛し続けました。

当時の価値観、常識からしたらかなりぶっ飛んだことをエリザベスはしたと思います。

今の時代だって、自由とは言っても人々は本当の意味では自由ではありませんし、愛には生きていません。
「生活の為」「子供の為」「責任が…」「世間体が…」と結婚生活は、愛には見えるけど実は愛ではなく、依存関係にあるだけの夫婦は多くいます。
価値観、常識等の拘りを捨てれば、自分もパートナーもそれぞれの幸せを見つけられるのに、自由に生きたいけどその自信がなくて、自分を縛り付ける人を側に置き、自由になれない状況を自ら作っています。

常識や世間一般の価値観に従い、ちょっと不幸でいるのは簡単です。
でも、常識や拘りを捨てるのは勇気のいることですが、それをすることで自分も自分の周りの人も幸せにします。

「毎日LINEくれる」「プレゼントをくれる」「結婚してくれる」「養ってくれる」「愛を囁いてくれる」「嫉妬してくれる」「束縛してくれる」「いつも一緒にいる」
だから愛されている。
これ、思い込み。
愛してなくたって毎日LINEできる人もいるし、愛してなくても愛してると言える人もいることは分かってるのに、これらが愛情のバロメーターとしてしまう価値観。
愛する人の幸せの為に、お互いが傷つけあわない為に距離を取り、側にいないようにすることもある。
結婚できなくても、相手が幸せであるならいいという愛もある。
お互いの関係を公に認めてもらえなくたって、愛は存在する。

愛は、常識や世間一般の価値観とは異なるところに存在する。


私、エリザベス、すごく好きです。
エリザベスは、常識とか世間一般の価値観を愛に持ち込まなかった。
そんなところが好きです。

ロバートが反逆者の息子で、世間的地位が低かろうと、世間の評判が悪かろうと好き。
ロバートが結婚してようが、自分と結婚できなかろうが、ロバートが好き。

それでいいじゃないかって私は思う。

以前、共演したことのあるとある男性アルティスタが、あまり深刻な感じはなく、ライブの後の打ち上げで、さらっとですが、
「自分を嫌いな人は多いし、敵も多い」
と言ってたことがありました。
私、それを聞いて、瞬時に、「やっかみでしょ」って思いました。
少なくとも私はその人のこと嫌いじゃないし、むしろ好き。
本当に、その人を嫌いな人はいるかもしれないですが、誰にでも自分を嫌う人、合わない人は2割はいるそうなので、それはやむを得ない。

実は、その人に限らず、私、私が仕事で関わる男性の悪口を吹き込まれるってことは、割とよくあります。
それも、私がその話を信じたら、「どんだけ最低の人間なんだ!」と思うような、その人と関わりたくなくなり、仕事を依頼しなくなるようなことを言われたりします。

でも、私、そんな話を真に受ける程、馬鹿じゃない。
それに、その話が本当だとしても、私には私の判断基準がある。
誰かを嫌う時は噂を信じてではなく、私との関係性の中で嫌う。
世間の評判とか噂とか信じたり、周囲の人の目を気にしてその人と距離を取ったり。
馬鹿馬鹿しいですよね。
他人に振り回されても、幸せにはなれない。

共演者の悪口を聞いたら、私なら、
「この人は私とその人が仲良くすることが、そんなに嫌なのか。
私とその人が仲良くなって、私がその人に仕事を依頼して、その人が活躍するのがそんなに悔しいのか。
そんなにやっかまれる程、その人は輝いてて、素晴らしいのか」
って思います。

宮廷中の人からやっかまれ、評判の悪かったロバート。
結婚できない相手でも、エリザベスが愛した人。
きっと素晴らしい人だったんだと思います。

エリザベスはその後、ロバート以外の人とも恋をするのですが、結婚は考えなかったそうです。
王族なら結婚して世継ぎを設けるのが当然という価値観、常識を覆し、「ロバートと結婚できないなら、結婚しない」とエリザベスは愛に生きた。
できそうで、できないことですよね。

エリザベスは、ヨーロッパの弱小国だったイングランドを栄光の大国に導いたことで有名です。
でも、そんな話をこの公演で見せたい訳じゃない。

エリザベスの生き様を見ると、
「当たり前だと思ってる常識や、自分を縛る価値観を疑ってみましょう。
それらは、本当にあなたを幸せにしてくれますか?
そんなものに惑わされず、自分なりの考えを持ちましょう」
って言ってるかのよう。

私はエリザベスのそのしなやかな強さに憧れます。

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エリザベスを私が、ロバートを三枝雄輔さんが演じます。
このタラントは、雄輔さんはバイレではなくカンテとしての出演になります。

このタラント、明日、初めて合わせします。
愛あるタラント、愛しかないタラントにしたいと考えてます。







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