【舞踊団公演】ガロティン・白蓮の分身・花街育ちの優

(03)舞踊団公演

さて、間が空いてしまいましたが、舞踊団公演の演目紹介です。

カルタヘネーラ&タラントの次ぎは、ガロティンです。


タラントのところで、伝右衛門の家に住んでいた内縁の妻のサキを追い出した白蓮でしたが、困ったことになりました。
それは、サキがいなくなたったことで、伝右衛門は白蓮の方にやたらと寄ってくるようになったことでした。
家の実権を握り、女主人気どりのサキが気に入らなかったから追い出しただけで、伝右衛門を愛していた訳ではなく、伝右衛門の相手をするのはうんざりしていました。

『英雄色を好む』の典型で、伝右衛門はたいそうな女好きで、何人もの愛人を囲っていましたが、白蓮との結婚の為、皆、縁を切ってしまいました。
最後まで手元に残してた内縁の妻であるサキまでも、白蓮の為に縁を切ったのですから、女日照りでは生きていけない伝右衛門が白蓮の方に行くのは当然です。


「政略結婚なんだし、自分のところに来られるのが嫌なんだったら、夫が愛人を囲ってることは大目に見ればいいのに」
と思いますが、そんなに正論通りに動けないのが人の性。仕方ないです。
白蓮には天皇との血縁にある者としての意地があった。
平民の女たちと、夫を分け合うことはプライドが許さなかった。

とは言っても、現実問題として、「伝右衛門に触られるのは嫌…」と感じていた白蓮は、驚く行動に出ます。

なんと、夫に妾をあてがいました。
白蓮は、自分の代わりに伝右衛門の相手をしてくれる、若くて可愛い子を探してきました。
かつての伝右衛門の愛人の一人、花街の女の妹・優でした。
夫を平民の女たちと分け合うことが嫌だったけれども、それ以上に伝右衛門の相手をするのは嫌だったようです。

伝右衛門は、若くて可愛い優にあっと言う間に、ぞっこんになります。
優は、白蓮も住む伝右衛門の家に住むことになりました。
女房が用意してくれた、女房公認の愛人です。
遠慮なく、優と仲良くしました。

白蓮にとって、サキは脅威でした。
家のことをなんでも知り、伝右衛門を取り巻く人たちからも信頼厚いサキは、白蓮ができないことができました。
ただお飾りとして妻の座にいるだけの白蓮は何もできず、何でもできるサキが羨ましかったし、負けてる気がして悔しかった。

でも、優に対しては、コンプレックス・スイッチは入りませんでした。
それどころか、
「お金で買われた妻である私(白蓮)は、お金で買われて愛人となった優と何が違うのだろう。身分が違えど、同じだ」
「ただ、男を誘惑して、男と寝るだけの存在。そうやって生きていくしかできない人」
と白蓮は、優のことも、自分のことも、そう思ってました。


結婚は、好きな相手とするものではなかった時代。
女にとって結婚は、就職するようなものだった。

身分によっては、結婚という形ではなく、お妾さんとしてしか生きていけない女たちもいました。
いずれにせよ、生きていく為の戦略。
就職でした。

10代の若き優も、花街の姉に育てられ、その姉は伝右衛門の元愛人であり、そういう世界しか知らなかった。
だから、大人になり、就職するかのように伝右衛門の愛人になることをすんなり受け入れた。


でも、哀しいかな、行き場を失った女たちの愛はいずれ爆発する。


優を気に入り、
「この子となら同じ屋根の下に住み、夫を分け合うことができる」
と優を選んだ白蓮。
時に、三人で同衾することもあったとか。
それは、
「私と優は同じ」
と白蓮に思わせる何かを優は持っていたからであり、後に、白蓮のその勘は当たってたことを優は証明する。

その後、白蓮は二番目の夫・伝右衛門を捨て、三番目の夫となる龍介と駆け落ちしますが、なんと、優も他に好きな男ができ、伝右衛門を捨て、その男の元に走るのでした。

舞台の上の白蓮と優は、そんな激情の未来を未だ知らない、出会ったばかりの頃を演じます。


最初の演目・ソレアを演じたのは白蓮と名乗る前の若い頃の白蓮・燁子でした。
要は分身です。

このガロティンのヒロインも、白蓮とは別人だけど、同じものを内に秘めているという意味で、白蓮の分身という位置づけで登場します。

優役(夜の部):日下ゆみ。2018年の舞踊団公演では、秀吉(ドミンゴ)の女房・寧々役を演じました。

優役(昼の部):川村芽衣。2020年の舞踊団公演では、頭中将(ドミンゴ)の正妻・四の姫役を演じました。





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