【舞踊団公演】ティエント・自由を手に入れる手段

(03)舞踊団公演

舞踊団公演7番目・ティエントのご案内です。

社交界に顔を出し、そこで多くのセレブたちと知り合いになり、思ったよりも多くの女たちが、親の決めた相手と結婚した後、夫とは別の男性との恋を秘めていることを白蓮は知りました。
『貞淑な妻の鏡』と謳われた武子ですら秘密の恋人を持っていたのを知り、白蓮は、恋は歌集の中だけの出来事じゃないことを実感しました。

そんな時、新たな書籍の出版が決まった白蓮の元に東京から編集者の宮崎龍介が訪れてきました。
龍介は、後に白蓮の三番目の夫となる人です。
二人は馬が合ったようで、急速に惹かれ合い、ついには駆け落ちを決行します。

当時は、姦通罪のあった時代でした。
男性は何人ものお妾さんを持っても良かったけれども、女性は夫以外の男と通じれば、間男共々、牢屋に入れられました。
数百万の慰謝料を払えば別れられる今とは比べ物にならない位、不倫を成就するのは大変でした。

私は、恋にのぼせた白蓮に男を見る目があったとは思えずにいます。
私、龍介、あまりいい男な気がしてません。

大富豪の夫から奥さんを奪った割りには、その後が情けない。
姦通罪に問われない為に世間を味方につけるという目的で、白蓮から伝右衛門への絶縁状を新聞に公開しましたが、そのことで二人の駆け落ちは『白蓮事件』として世間に衝撃を与え、世間を味方につけるところか、敵に回してしまいました。
大騒ぎになったから、白蓮の実家の家長であるお兄ちゃんは責任者として世間から避難され、職を失います。
そんななので、お兄ちゃんは妹・白蓮を放置する訳にもいかず、龍介から引き離し、実家に幽閉しました。
そして、伝右衛門の元に戻るか、髪を落として尼になれ!と白蓮に迫ります。
当時の感覚では、ごくごく常識的な言動です。
そんな苦境に立たされた白蓮を、龍介は何年もの間、救い出すことができずにいます。
その後、白蓮の監禁は解かれ、二人は一緒になりますが、それ、龍介の力じゃなく、関東大震災のバタバタに乗じてという棚ぼた。
で、やっと一緒に暮らせるようになったかと思ったら、龍介は病気になってしまい、稼げなくなります。
あの時代、働く女性を職業婦人って呼んだ位、女性が稼ぐのは大変でした。
そんな中、白蓮は、小説を書いたり、歌集を出したりして、何とか家計を支えました。

なんて、情けない。
行き当たりばったりで、口ばっかで、行動が伴わない、ダメ男。
「白蓮、外れくじを掴んだな」と私は思ってしまいます。
恋というのは怖いですね。
ダメ男も運命の人に見えちゃうんだから。

私は思う。
因果応報はある。

白蓮は、これまでの自分の行いにより、悪い種を撒いてきた。
悪い種からできる実に良い実はない。
自分が蒔いた種からできた実を刈り取るのは自分。

物語として読めば、ドラマチックで素敵ですが、実話だと思うと、白蓮のしたことは褒められたことではありません。
特に、二番目の夫にはもっと感謝があっても良かったかと思います。
感謝するどころか、不平不満ばかり。

神様は見ていた。
白蓮は楽園を追われてしまいました。
失楽園です。

駆け落ち後の人生は苦労の連続だったようです。

ただ、私は同じ女性として思うのですが、白蓮は龍介にのぼせたというよりも、「龍介ならば自分を自由にしてくれるかも」と思ったのではないかと。
白蓮は、『自分で決める自由』が欲しかった。伝右衛門と別れたかった。
決められたレールから外れたかった。
その為に、龍介を使ったに過ぎないのではないかと。

だから、その後の龍介がうだつが上がらなくても、そこに期待はしてなかったから、気になってなかった。

思い返せば、二番目の夫・伝右衛門との結婚の時も、「九州の地で自分で何かできるのでは!」と白蓮は希望に燃えました。
女学校の経営とか夢みたものの、結果的には携わらせてもらえず、ひどく落ち込みました。

白蓮は、全然好きじゃない伝右衛門との結婚も、自分の目的を果たす為ならと受け入れることはできました。
龍介との駆け落ちも、その程度のものだったのではないかと私には思える。

白蓮は、男がすることを女の白蓮もしたかっただけ。

誰かに養われるのではなく、自分で稼ぎ、自分の足で立ちたかっただけ。


ということで、今度の舞台、大恋愛の相手役という位置づけの龍介は出てきません。
まさかの、『白蓮事件』のもう一人の主役である相手の龍介なしの、白蓮事件です。
『友達の、会ったことのない旦那さん』のように、そういう人が存在するのは知ってるけど、見たことないってのと同じ感じで、舞台の中で、『龍介』は存在しますが、姿は現しません。

伝右衛門の元を離れ、自分の足で立つと決めた白蓮にとって、その後の人生、男はいてもいいけど、いなくてもいい存在だったというのを舞台で表す為、龍介は登場しません。

7番目の演目となるティエントで、白蓮は伝右衛門の元から去ってゆきます。

龍介が白蓮のところに来て、伝右衛門から奪っていくのではなく、
白蓮が伝右衛門の元から出て行きます。


白蓮が去った後には、伝右衛門と出会った日に伝右衛門から送られた服が残されていて、
白蓮から伝右衛門への決別の意を表しています。

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