舞踊団公演11曲目:ペテネーラ

(03)舞踊団公演

首謀者たちは逮捕され処刑されますが、議会がメアリーを処刑するようエリザベスに進言してきても、エリザベスは中々首を縦に振りませんでした。
しかし、メアリーが陰謀に関わったという証拠が見つかり、エリザベスは処刑に同意せざるを得なくなりました。
3度も結婚し、その都度夫に振り回され、野心家の男たちに利用されたメアリー・スチュアート。
彼女に母アン・ブーリンや姉メアリ一世の面影を重ね、エリザベスは哀れに思ったのでした。
そして、「いつか私も断頭台に上がる日が来るかもしれない」とエリザベスは怖くなりました。

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王族にとっての結婚は政治。愛や絆を求めると厄介な問題が起きる。


女性であることよりも君主であることを選び、結婚に愛を持ち込まなかったエリザベス。
君主であることよりも、夫を君主とし、自身は支える側に回ることを選び、結婚に愛を持ち込んだメアリー・スチュアート。

同時期にイングランドとスコットランドに存在した二人の女王は、何かと対比の対象となります。


メアリーは生まれながらに女王でしたが、王侯貴族の女性としての教育は受けてきたものの、国王になる為の帝王学は学んできませんでした。
当時の王侯貴族の女性の教育とは、刺繍だったり、語学だったり、ダンスだったり。
要は、男性のアクセサリーとしての教育です。

メアリーは、国を動かす意思決定をどうするかという教育を受けておらず、その心構えもなく、スコットランドの女王になります。
周囲の人たちにその危機感はなく、メアリーが然るべき男性と結婚し、その人に国政を任せればいいと考えていました。

そんなメアリーですから、夫に守ってもらうしか生きる術を持たず、夫に依存します。
自分で生きていけないのですから、夫に嫌われないように振る舞います。
守ってもらう対価として、自分の持つ利用する価値のあるものや身体を差し出し、子供を産み、夫に愛されようと懸命になります。

メアリー・スチュアート、THE オ・ン・ナって感じですね。

仕方なかった。この時代の女性はそうやって生きてきた。
この時代というか、つい、ほんのちょっと前まで、私たちの祖母、母の代までは、女はこうやってしか生きてこれなかった。

この時代の男性は、あまり女性を一人の人間として扱ってこなかったのかもしれないですね。
性処理の対象、子供を産む機械。
男性の方が優れているという価値観の中、女性たちを踏みにじってきました。
例え、その相手が女王であっても。

一方のエリザベスの振る舞いを見ると、現代の私たちのお手本になるところがいっぱいあります。

それは、自分を大事にしない結果になることには、「NO」と言うことです。

相手が嫌な奴で、無理強いをされれば、「NO」と言い易い。
でも、愛する男性から優しくお願いされると、断れなかったりする。
何故なら嫌われたくないから。
それで、「少しくらい自分が犠牲になっても、それであの方が喜ぶなら!(立身出世のお役に立てるなら!」
という選択を女はしがちです。

アン・ブーリンも、ジェーン・シーモアも、メアリー一世も、メアリー・スチュアートも、皆、愛する人に愛してもらおうと自己犠牲をし、自分を差し出す代わりに夫からの見返りを求めました。

当然ながら上手く行きません。
破滅していきます。

女たちは、男への依存を止めねばなりません。
そして、男に幸せにしてもらおうという期待は捨てねばなりません。
気が利くとか、内助の功とか、それをすることで自分に価値を見出すことを止めなばなりません。
自分を利用しようとする人を見抜き、距離をおかねばなりません。
女たちは、自分の足で立たねばなりません。

『見返りの愛』は愛でないことを知らねばなりません。

自分の足で立ってる男女だけが、真の愛を手に入れられます。
そんな二人でなければ、支え合い、助け合うことはできません。
自分で自分を大事にするから、自分を犠牲にしないから、相手からも大事にされます。

エリザベスはそういう生き方を選びました。
そんなエリザベスからしたら、メアリーはなんと哀しい存在だったことでしょう。

メアリーはメアリーなりに懸命に生きました。
愛する男性に守ってもらい、幸せに生きたいと願い、その男性の望み通りのことをしました。
結果、騙され、利用され、処刑されることになりました。

処刑場に着いたメアリーは黒のマントを脱いだら、下には真紅のドレスを着ていて、息をのむような美しさだったそうです。
断頭台で彼女の首に斧が降り降ろされた数、3回。
苦しみ悶えながら死んでいきました。

王族に生まれ落ちることは、本当に幸せなのでしょうか。

陰謀に巻き込まれ、命を狙われ、無実の罪で処刑されたり。。。

エリザベスは、
「ボタンを一個掛け間違えれば、私も母やメアリーのように断頭台に上がることになるかもしれない」
とこの世を去るメアリーを悲しく見つめるのでした。

断頭台に上がるメアリー・スチュアートとその侍女たちが、ペテネーラを踊ります。

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